それも人生

友達が少ないのでひとりごとを言っている

2018年に観た映画③/「万引き家族」が怖かった、松岡茉優に惑わされた

続きです。あっさり書くつもりだったのですが、万引き家族松岡茉優のことを思い出したらこってりになってしまいました。

レディー・プレイヤー1


森崎ウィンがかっこよすぎて、ヒロインがヘタレ主人公から鞍替えしてしまうんじゃないかとハラハラしながら見ました。

森崎ウィン氏のことはNHK教育テレビで放映されていた名曲クリスタル・チルドレンで異常な歌うまを披露していたのが胸に刻みつけられています。当時の熱が思い返されました。ブラウン管越しにときめきをくれた彼が、10年の時を経て、ハリウッド映画の中でさらに輝いた姿を見せてくれるなんて、これ以上の幸せがあるでしょうか。

youtu.be

ただ映画のストーリーとしては、めちゃくちゃ頭のキレるやつもいなければ、心底性格ゆがんだやつもおらず、見ごたえがあんまりなかった印象です。敵がアホすぎる…。なんでパスワードを紙に書いてるやつにモブキャラを殺されなくちゃいけないんだよ…。モブキャラのみんなだって浮かばれないよ…。電脳世界を支配したいわりにセキュリティ意識がガバガバすぎて心配です。

個人的にアクションよりも頭脳戦を見るのが好きなので、割と物理で戦う今作が好みでなかったのもあります。せっかく電脳世界なんだから、「強いロボット作るぞ~~~」みたいなフィジカルではなく、インテリジェンスで攻略してくれたら良かったのに…と思っています。でも、森崎ウィンを起用してくれて本当にありがとう。今後もぜひ懇意にしてください。



君の名前で僕を呼んで


前情報を「桃が印象的に使われる同性愛を描いた作品」ということぐらいしか知らずに行ったら、い、印象的ってそういう…!?とうろたえてしまいました。17歳のエリオ的にはかなり恥ずかしいシーンだと思うのですが、24歳のオリヴァーはSっ気があるのか、さらに辱めを与えるじゃないですか…!?ああいうシーンがむずがゆくてわたしには厳しい映画でした。(観た人は分かってくれるはず)

「なんか気になるな~~、気づいて欲しいな~~~」と視界をうろついたり、ピアノを弾いたりなんやかんやで遠回りなアピールをしてくる17歳に対し、伝わっているような伝わっていないような曖昧な感じでやり過ごしている24歳の雰囲気が、終始いたたまれなくて手で顔を覆っている前半でした。

ここ数年、わたしはいろんなことはっきり言った方が話が早いと気づいてしまい、遠回りなアピールはないものとして、生きてしまっているせいかもしれません。こちらが扱いに困る自意識は苦手なので、無視した人生を送ろうと思ってるのです。

エリオとオリヴァーが出会ってしまったのは事故なので(個人的な解釈ですが)「うわあ~、うっかり多感な思春期の人間に好かれるとこういう甘ったるいアピールに巻き込まれるんだな~、しんどいぞ~~」の感情に囚われてしまいました。この映画の美しさを堪能するには、煩悩が多すぎるのかもしれません。

ていうかオリヴァーと同い年になって気づいちゃったのですが、17歳のDKに手を出すのはやばいよな…。ひと夏で終えてくれて本当に良かったよ…。でもかわいい17歳から猛烈アピールされたらぐらついちゃうかもしれないし、オリヴァーに同情するような気もするし…。普通にオリヴァーがタイプじゃないせいで、エリオにいまいち感情移入できなかった可能性もあるし…。

というわけで雑念が多すぎたという話でした。



万引き家族


ほんとうに怖かった。狂気を感じました。なんですか、あの貧困家庭の解像度。セットの小道具の量が尋常じゃないです。誰かが住んでいた家をそのまま持ってきたかのような生活感。

ドラマや映画のフィクションで描かれる「家」というのは、セットであり背景です。見るべきものは俳優なので、背景は「片付いた家だな」「ごちゃついた家だな」くらいの印象で充分。現実よりもシンプルで整理されていることが多いと思います。誰かが住んでいることが記号として分かればいいのです。

しかしこの映画の背景は、所狭しと並んでいる名前のつけようもない日用品、キッチンには綺麗とは言えない食器の数々、くたびれたタオルが積み重ねられた収納、6畳の部屋に足の踏み場もなく敷かれた布団と使い込んだタオルケットの質感、圧倒的に情報量が多く、息が詰まりそうなほどでした。背景の描きこみの多さは物理的なものだけではなく、生活の1シーン1シーンをたっぷりと時間をとって丁寧に丁寧に描いていく様子にも見られます。

前半は貧しいながらも時たまの幸せをかみしめて、家族が肩を寄せ合って生きる様子が「執拗に」丁寧に丁寧に描かれます。この映像の意図が分からなくて、ひたすら怖かったです。前半の日常パートは、後半以降の事件展開の悲劇性を際立たせるために、精緻に描いていたのでしょうか。絵が破かれたときにより「悲しい」と思うために、紙にはできるだけ丁寧に時間をかけて美しい絵を描いていたというのでしょうか。

そういう意図があったかは知りませんが、わたしは効果的にショックを受け、是枝監督を心底恐ろしいと思いました。また、狂ったような解像度の背景に埋もれることなく、存在感を示した俳優たちがいなければ、映画として成立していなかったと思います。

家族を見守り海辺にまどろむ樹木希林は、世間では目を伏せられがちな「老い」さえ作品になるのだと希望に感じました。リリーフランキー安藤サクラは言わずもがなですが、城桧吏くんも色気が尋常じゃないですね。とってもかわいい…。

ただ一番驚いたのは、松岡茉優の佇まいでした。海水浴のシーンの華奢な身体を見て、かなり絞ったんじゃないかと思いました。もともと細かったけど、筋肉質だったような気がします。亜紀ちゃんになるために、どれほど険しい道筋をたどってきたのか、その一端を垣間見たような心地でした。背中は細いのに、逞しく強いオーラが見えました。

風俗店のシーンで池松壮亮演じる4番さんを撫でる指も骨ばっていて、頼もしいなと思いました。かっこよすぎて惚れそうです。狂気の監督と、絶望的なほどすばらしい俳優たちとわたりあったこと、同世代の俳優として心底あこがれます。

映画の鑑賞後に、映画の重さに圧倒されて打ちのめされたあと、また「松岡茉優と付き合いたい症候群」を発症しました。ただこんな大仕事は、生半可な覚悟では決してやり遂げられなかったのではないでしょうか。



もし撮影時期に、松岡茉優と交際していたとしたら、


「ごめん、大事な仕事があってしばらく会えないかも」

「うーん...、半年くらいかな」

「君のこと嫌いになったとかじゃないよ」

「しばらく、美味しいご飯とか、食べる気分になれそうにないんだ」

「ごめんね、終わったら連絡するから」



と行きつけの居酒屋で最後の会話をしてから1年以上経ったある日、テレビの中に彼女を見つける。

出演作がカンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞したらしい。彼女は泣いていた。仕事がうまくいったんだ、と安心した。

差出人不明でチケットが届いていた。一人で観た。エンドロールが終わっても立ち上がれないほど呆然と泣いていた。

ようやくスマホを開くと彼女からのメッセージが届いていたが、読まずに消した。連絡先も消した。

もう、スクリーン以外で会うことはないだろう。

そんなこんなで、そっと別れるという陰気な夢小説を書きそうなくらい落ち込みました。茉優、おそろしい子…!!



めちゃめちゃキショキショになってしまったので、一旦終わります。続く。


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