それも人生

友達が少ないのでひとりごとを言っている

前のめりで死にたい/「ウチら棺桶まで永遠のランウェイ」によせて

楽天で注文していたkemioの「ウチら棺桶までランウェイ」が届いていました。

タイトルが神がかり的に良いな…と思って即予約したのですが、読み終えてみると「ウチら棺桶まで永遠のランウェイ」という言葉は唱えるだけで、希望になる呪文になっていました。「ホイミ」なのか「ベホマズン」なのかは、時と場合によるかもですが。まあ、ドラクエそんなにやったことないけど。

youtu.be
2年前の動画で、彼がヒョウ柄のファーコートを着て放った台詞

「毎日がランウェイだかんね!?目立たないでどーすんのって感じで生きてるから!」

これでハートを撃ち抜かれた身としては、今回のエッセイは願ってもないファンサービスでした。


冒頭の渋谷で撮影されたお洒落なグラビアは、「けみおのくせにかっこいいやんけ!」ですが、本文のイントロは「地球上のみなさーん!」なので安心してください。脳内再生余裕。テンポとキレがずば抜けたけみお節炸裂で駆け抜けます。本を読んでいるのにラジオを聞いている感覚になりました。普段の動画で披露される軽快なトークから賢さは知っていましたが、読み心地の良い文章を書くんだなあと好きがこぼれ落ちます。

けみおの魅力は挙げればキリがないのですが、ひとつ挙げるならは比喩の語彙の豊富さを超尊敬しています。今回いいなと思った表現は、恋のお悩みに対する回答「その人と墓入りたいですか?」です。それだけじゃなくて、けみおは「一緒に散骨されたいか?」と葬送方法まで思案しています。最近は、「墓に入りたいとまでは行かないけど、墓地見学くらいはしたい」相手がいたらしい。こんなに強くてキャッチーな言葉を紡げるのは、超才能だな~と思います。歌詞とか提供したらいいのに。(「どこまで行っても渋谷は日本の東京」は名曲だったね)

エッセイの内容としては、SNSYoutubeにはアップしていない、パーソナルな思考のログであり、一般的なエッセイのようなエピソードではありません。具体的にどこでいつ何をしたかは特に書かず、進路や家族、友人、恋愛、人生について、彼の経験から得られた「私はこう思ったの!」という結論のみが端的につづられています。見開き1ページで完結のオムニバスなので、枕元において眠たくなるまで読むとかいうのもありじゃないでしょうか。わりとサクサク読めます。あとは本書ではじめて明かしていることもあるので、そこが世間的には注目されるかもしれません。とはいえ自分としては彼の印象が大きく変わることもないし、属性として処理できないほどけみおはけみおであるなあ、という証明になってほしいです。



わたしはけみおのちょうど一つ上ですが、けみおの人生哲学はほぼ100同意、答え合わせをする感覚で読みました。ぐだぐだと学生生活を延長し試行錯誤して得た「人生こうやって生きたらいいのかも」という直感を、発信力のある同世代に肯定してもらえて嬉しいです。特に第4章で今の世の中のくだらない偏見に蹴りをくらわすセクションは、これが「ウチら」の時代からのスタンダードになるなら、これからも希望をもってやっていけるなと思えました。くだらない偏見やつまらないルールに悔しい想いをしている人は救われるかもしれません。

タイトルからして「棺桶」とあるように、けみおは今を輝きながらも常に死を意識しているようです。エッセイからも人生を俯瞰しているのが感じられました。わたしも理想の葬式は最高にアゲなイベントにして参列者のみなさんとシェアハピすること、と語って「なに言ってんの?」と怪訝な顔をされたりしているので、死はもっとポップなトピックになっても良くない?と思っています。だって人生最後まで上り調子でいたいじゃん。じゃあ葬式は人生のトリでしょ。盛り下がりたくないなあ。

本書で気づいたのは、けみおもわたしもあなたも、棺桶までのランウェイを並走しているらしいということ。ランウェイなんだから顔を上げてイケてる格好で歩かなきゃ勿体ない。目立たなくてどうすんの!?わたし的には、自分が自分を好きになることに前向きであり続けることが、ランウェイを胸張って歩くコツかなと思います。死ぬ日だって「人生もっと面白くしてやるぞ~!」と思いながらがいい。暗い気持ちで死ぬのは嫌だ。前のめりで死ぬために、棺桶まで最高のランウェイにしてやるぞ。


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